私たちの住んでいる奈良県は、世界に誇る有数の歴史的遺産と豊かな自然環境に恵まれ、日本人の心のふるさととして親しまれています。私たちは、この恵まれた環境を保全すること、環境にやさしい地域づくり、地場産業の振興、そして気候変動の危機の回避を目指して、新しい時代に対応した地域エネルギーの取り組みを開始します。
4年前の東日本大震災では、原子力発電と電力の大規模集中型のエネルギー供給システムの脆弱さが浮き彫りとなりました。これまで、わが国のエネルギー政策は、国や電力会社などの供給者を中心に策定されており、国民は与えられたエネルギーを利用するだけの客体としてとらえられるのみで、その声が政策に反映されることはほとんどありませんでした。しかし、2012年7月に施行された「再生可能エネルギーの全量固定買取価格制度(FIT)」は、地域エネルギー普及の取り組みを広げ、発電量を大きく高めていくことに繋がりました。この制度を活用すれば、奈良県でも豊かな資源に恵まれたよき自然環境を利用し、地産地消の地域にやさしい地域エネルギーの発電と利用が可能になり、地域産業の振興をささえることができます。しかしながら、そのFIT制度も見直しを余儀なくさせるような議論があり、太陽光発電事業の急速な普及によって生じた受給バランスの不具合、電気料金への負担増に対する批判の声の高まりを背景に、原発再稼働への動きも着々と進んでいます。
こうした中、ならコープグループが取り組んでいる「吉野共生プロジェクト」は、吉野の森と水を守る募金活動から始まりましたが、地産地消・食べる“なら”大和、地域エネルギー・発電、森林・環境・水ビジネス、地域医療・福祉の実現をその目標にもっており、奈良県の豊かで優れた自然環境を生かし、その保全と地場産業振興を目指す県民運動に発展しています。このプロジェクトは、県下各自治体の賛同の輪を広げ、県内企業・県発祥企業の運動参加と協力を呼びかけながら、新しい、ならコープの「エネルギー政策」を実行することも課題としています。
今、私たちは協同組合間の協同やさまざまな地域団体と連携することによって地域エネルギーを創出し、その普及と活用を広げる運動を開始します。また、学習・啓発活動や電力多消費型の暮らしを見直す活動を広く呼び掛け、省エネルギーの新しいライフスタイルへの移行や家庭におけるエネルギーの自立分散型システムの導入支援を行うことにします。この「固定買取価格制度」を活用した発電によって生まれた収益の一部は、「再生可能エネルギー普及基金(仮称)」などに供出することにし、一人ひとりのライフスタイル転換につながる資金として活用できるように運営します。地域の生活者とともに学びながら、安心・安全な地域エネルギーの供給を目指します。
私たちは、原子力発電に依拠した大規模集中型エネルギー供給システムから地域の自然環境を活用した自立分散型発電システムへの転換をめざして、奈良県の地場産業振興に貢献し、持続可能な地域社会づくりを目指して「株式会社コープエナジーなら」を設立します。
2015年5月11日
設立発起人
中村 和次(株式会社CWS代表取締役)
森 宏之(市民生活協同組合ならコープ理事長)
松本 照生(おひさまエナジーステーション株式会社代表取締役)