小又川水力発電所(下北山村)のページ

 

※2021年3月より村道池郷線の崩落による水圧管破断で運転を休止していましたが、修復工事完了し2021年12月16日より運転を再開しています。

※雑誌「地球温暖化」(日報ビジネス刊)2021年3月号に取材記事が掲載されました

 

奈良県の最南端、下北山村で1993年より稼働中の村営小又川発電所を、下北山村とならコープの協定に基づき、コープエナジーならが事業主体となって出力増強のために更新し、固定価格買取制度を活用した全量売電の発電所として運営し、収益の一部を下北山村の振興に活用します。

更新する理由

小又川発電所は1980年代に村や奈良県等が中心となって建設に向けた検討が重ねられ、多くの課題を乗り越えて運転を開始しました。当時の様々な制約条件から、全量売電ではなく下北山スポーツ公園での電力の自家消費を発電事業の主たる目的とし、消費規模にみあった発電出力(98kW)の小水力発電所として運営されていました。
(詳細は全国町村会ホームページの小又川発電所の記事をご覧ください)

ドキュメンタリー映画「人生フルーツ」の主人公でもあった建築家の故・津端修一氏も、当時の発電所建設にアドバイザーとして次のような意見を述べられ、計画を後押しされました。

”経済が支配する時代から,生活が支配する時代へ, 現代は急速に変りはじめているが, 下北山村が<緑地公園発電事業>の向うに構想している自由時間生活は,極めて魅力的である。現代のエネルギー政策と自由時間政策を見事につなげたこの事業が, 山村振興計画の中に, その新しい芽を育てることができれば,これほど嬉しいことはない”

(山村振興コンサルタント意見書-奈良県下北山村-、社団法人全国農業構造改善協会、1989年)

一方、本来の小又川の水量をフルに活用すると、倍近い発電出力を産み出せることが調査結果より判明し、固定価格買取制度を活用することにより、これまでの発電所を継続して運転するよりもより多くの再生可能エネルギー由来電力と事業収益が得られる見通しがたったため、一層の再生可能エネルギーの普及拡大を目的として、村とならコープとの包括連携協定に基づき、小又川発電所の更新をコープエナジーならが行いました。

更新工事の内容

1.取水口を改良し、取水量を増やしました。

取水口のスリット(隙間)を大きくし、より多くの水を取り込めるように改良しました(写真上)。スリットを通過する葉っぱなどのごみは、自動除塵機(写真下)を新たに設置して除去します。これにより、最大取水量を毎秒180Lから毎秒281Lに増加させています。なお維持流量は、これまでと同じ毎秒28Lとします。

2.水圧管路を増強しました。

取水口脇に設けられた沈砂池兼ヘッドタンクから発電所まで有効落差が82mあり、現状ではこの間を350mm口径の水圧管路により水を落として発電していますが、取水量が増加しますので、摩擦損失を減らすために管を太くしました。
取水口から村道に至る区間は崖の上に管がコンクリートで巻かれて敷設されており、この管を取り出して太い管を入れるのはかなりの難工事となって工費がかさむため、現状の管の上に新たに300mm口径の水圧管(ポリエチレン管)を敷設しました。
村道の下に水圧管が埋設されている区間については、現状の管を取り出して、450mm口径の水圧管(FRPM管)に置き換えました。

 

なお、村道が川を橋で横断している区間(2ヶ所)では、橋に水圧管がぶらさがっており、これについては建設当初のままとしました。

3.水車発電機を更新しました。

取水量の増加に合わせて、より多くの発電出力(179.7kW)をもち、渇水時にも効率の良い発電を行える水車(横軸2射ペルトン水車)及び発電機に更新しました。発電所建屋は現状のものを使っています。
また発電所から川に水を戻す放水路を補修しました。

発電所更新・継承の経緯

2016年より、小又川水力発電所の更新の可能性について下北山村とならコープグループとの間で協議を開始し、2017年度には国の補助金(平成29年度水力発電の導入促進のための事業費補助金(水力発電事業性評価事業))を活用し、更新の実施可能性調査をコープエナジーならが行ったところ、更新計画が十分な事業性をもつことがわかりました。
そこで、下北山村とならコープが下北山村の村づくりに関する包括連携協定書を締結し、現状の取水設備や発電所建屋等を村からコープエナジーならが借り受けて、新たな水車発電機等による発電を行い、事業収益の一部を下北山村の地域振興に還元することとしました。

発電所更新を通じた地域振興について

協定に基づき、ならコープグループは下北山村に対して、

・誰もが安心してくらし続けられる地域社会づくり

・買い物や食事支援、スポーツ振興、観光など生活文化の向上

・ 環境保全型農林業推進

・雇用の創出に関する起案・推進協力

についての支援や協業を行います。
また、発電所建設費用の一部(3,000万円)をクラウドファンディング(取扱事業者:プラスソーシャルインベストメント株式会社)により市民の皆様に出資を呼びかけたところ、116名の個人・法人の方々から出資をいただきました。出資者の方々には下北山村特産の商品が特典として送付されます。

地産地消のでんきとして

小又川水力発電所で産み出された電力(FIT電力)は、2020年8月より小売電気事業者である株式会社CWSに特定卸供給され、「ならコープでんき」の電源の一つとして、主に奈良県内の家庭等に地産地消のでんきとして届きます。

 

更新計画の概要

取水地点  熊野川水系 一級河川 小又川 (発電用水利権者:下北山村
最大使用水量  0.281㎥/s
常時使用水量  0.10㎥/s
有効落差     82.0m
最大出力  179.7kW
年間計画発電量     1030MWh
総事業費     3億4500万円(税抜)
発電開始  2020年6月
設計・施工管理  合同会社ハイドロプランニング
施工  株式会社竹田建設
水車発電機  横軸2射ペルトン水車1台(田中水力㈱製造)・三相誘導発電機

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